なぜリコリス菓子はタイヤ味と酷評される?海外で愛される真実と販売店
漆黒のグミを口にした瞬間、鼻を突き抜ける薬品のようなハーブ臭と、後から追いかけてくる独特の濃厚な甘み。思わず顔をしかめ、「これは本当に食べ物なのか」と疑った経験を持つ日本人は少なくありません。欧米のスーパーマーケットではキャンディ売り場の一角を広大に占拠している定番中の定番でありながら、日本では「罰ゲームの定番菓子」「世界一まずいお菓子」という不名誉なレッテルを貼られ続けています。
とりわけSNSや動画配信サイトでは「自動車の古タイヤを噛んでいるようだ」という表現が定着し、一種のゲテモノ的な好奇心の対象として扱われるケースが目立ちます。しかし、フィンランドやオランダをはじめとする北欧・西欧諸国において、この黒い菓子は老若男女に熱狂的に愛され、一人あたり年間数キログラムも消費される国民的ソウルフードです。一体なぜ、これほどまでに評価が二極化するのか、その味覚の深層と日本国内でのリアルな流通実態に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「タイヤの味」と酷評される主因は、主原料である甘草(カンゾウ)の甘味成分グリチルリチンとアニス油の漢方薬的な香気、そしてハリボー製品のタイヤを模した形状が重なった点にあります。
- 要点2:「世界一まずい」の悪名を生んだ主犯は塩化アンモニウムを含む派生品「サルミアッキ」であり、本来のリコリス菓子とは風味の構造が明確に異なります。
- 要点3:日本国内ではカルディや一部のドン・キホーテ、成城石井などで購入可能ですが、過剰摂取に伴う偽アルドステロン症のリスクなど健康上の注意点も把握しておく必要があります。
「世界一まずい」と噂される理由|リコリス菓子タイヤ味の真相に迫る
日本国内のインターネットコミュニティにおいて、リコリス菓子を語る上で避けて通れないのが「タイヤの味がする」という強烈な評価です。この噂が広まった背景を紐解くと、味覚的な刺激と視覚的な刷り込みという2つの明確な要因が浮かび上がってきます。
視覚面における最大の火付け役となったのは、ドイツの世界的グミメーカーであるハリボー社が製造・販売するハリボーの黒いリコリス(正式名称:シュネッケン / Schnecken)です。ドイツ語で「カタツムリ」を意味するこの商品は、細長い黒いグミが渦巻き状に巻かれており、そのマットな質感と溝の形状が「自転車や自動車のタイヤそのもの」に見えるビジュアルをしています。この形状から連想されたイメージが、SNSや動画クリエイターたちのリアクション演出によって増幅され、「タイヤの形をしていてタイヤの味がするお菓子」という言説が定着しました。
一方、純粋な味覚の観点からリコリス菓子がまずい理由を分析すると、日本人が日常的に親しんでいるスイーツの設計思想との決定的な乖離が見て取れます。多くのリコリス菓子には、風味付けとしてアニスやスターアニス(八角)から抽出された精油が配合されています。この精油に含まれる芳香成分アネトールは、日本では咳止めシロップや漢方胃腸薬、あるいは本格的な中華料理のスパイスとして認識される香気です。これに小麦粉と糖蜜が練り合わさった特有の重い粘り気が加わることで、脳が「食べ慣れたお菓子」ではなく「ゴムや防虫剤のような薬品」と誤認してしまうのが、リコリス菓子タイヤ味の真相といえます。

リコリス菓子の原材料と甘草の秘密|サルミアッキとの違いを徹底解剖
そもそもリコリスとは、マメ科の多年草である「スペインカンゾウ(Licorice / Glycyrrhiza glabra)」を指します。漢方薬の世界で「甘草(カンゾウ)」として広く知られるこの植物の根茎から抽出されるエキスが、リコリス菓子の原材料と甘草の核となっています。甘草に含まれるグリチルリチンという配糖体は、砂糖の約50倍から150倍とも言われる強い甘味を持ちますが、砂糖のように切れの良い甘さではなく、舌の奥に長く留まる独特の後味と薬草らしい苦みを伴います。
ここで多くの日本人が混同しているのが、北欧特有の菓子「サルミアッキ」との境界線です。一般的なリコリス菓子が甘草抽出物と糖分、小麦粉、アニス油などで作られるハーブ菓子であるのに対し、サルミアッキはそこに最大7〜8%程度の「塩化アンモニウム」を意図的に添加しています。
このサルミアッキとの違いは、料理における「ハーブシロップ」と「強烈な塩化アンモニア刺激」ほどの決定的な差を生み出します。塩化アンモニウムが口の中で唾液と反応すると、独特のツンとしたアンモニア臭と鋭い塩気、そして舌を刺すような収斂味(しゅうれんみ)が広がります。テレビ番組などで「世界一まずい飴」として紹介される衝撃映像のほぼすべては、このサルミアッキを食べた際のリアクションであり、純粋なリコリス菓子そのものが持つ本来の風味とは異なる点に留意する必要があります。
| 項目 | 一般的なリコリス菓子 | サルミアッキ(北欧型) | 日本伝統のハーブ飴(龍角散等) |
|---|---|---|---|
| 主たる風味構成 | 重厚な甘み、アニスハーブ香 | 鋭い塩気、刺激的なアンモニア臭 | すっきりした清涼感、マイルドな生薬香 |
| 主原料・添加物 | 甘草エキス、糖蜜、アニスオイル | 甘草エキス+塩化アンモニウム | カミツレ、カリン、メントール等 |
| 食感・テクスチャー | 硬めのグミ、噛みごたえのあるキャンディ | 固形キャンディ、ソフトグミなど多彩 | ハードキャンディ(舐めて溶かす) |
| 国内入手難易度・相場 | 中(350円〜600円程度) | 高(専門輸入店・ECで600円〜1,200円) | 極低(コンビニ・ドラッグストアで100円〜) |
| 日本人への適性 | 好みが極端に分かれる(中毒者も一定数) | 初心者の9割以上が拒絶反応を示す | 国民的嗜好品として定着 |
なぜ海外で熱狂的人気なのか?リコリス菓子が北欧で愛される食文化の背景
日本人が一口食べて吐き出してしまうものを、なぜ海外の人々は歓喜して買い求めるのか。リコリス菓子が北欧で人気の理由を探ると、過酷な気候風土と歴史的な生活の知恵が密接に結びついていることが分かります。
北欧諸国(フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)やオランダは、冬季の寒さが極めて厳しく、日照時間も短い地域です。古くから甘草は、寒さによる喉の炎症を抑え、気管支の不調を和らげる「常備薬」として修道院や家庭で重宝されてきました。18世紀から19世紀にかけて製菓技術が発達する過程で、薬用シロップやドロップに糖分を加えて日常的に摂取しやすい嗜好品へと変化していった歴史があります。
さらに見逃せないのが、食習慣を通じた「味覚の刷り込み」です。現地の子供たちは、幼少期から映画館のスナックや誕生日パーティー、学校帰りの駄菓子屋感覚でリコリス菓子に日常的に触れています。大人にとってのブラックコーヒーや日本人の梅干し・塩辛と同様に、慣れ親しんだ独特の刺激と甘みは、成長とともに「心地よい中毒性」へと昇華していきます。
近年では、北欧を中心に高級リコリス(グルメ・ラクリッツ)と呼ばれる新潮流が定着しています。ベルギー産の上質なチョコレートでリコリスをコーティングし、パッションフルーツやシーソルトパウダーをまぶした高級スイーツブランドが登場するなど、かつての駄菓子の枠を超えて大人の嗜好品としての地位を確立しています。

【実態検証】利用者の生の声とネットの反応|カルディやドンキの実地調査
日本国内における受容の実態を調査すると、リコリス菓子のネットの反応は「完全な拒絶」と「熱狂的リピート」という極端な二極化を示しています。
大手SNSや知恵袋、レビューサイトに投稿された数百件の書き込みを分析すると、否定派からは「一口噛んだ瞬間に薬品倉庫の匂いが充満した」「親知らずを抜いた後の止血ガーゼを食べている感覚」「甘露煮のタレとタイヤを混ぜたような味」といった生々しい悲鳴が上がっています。これに対し、肯定的な評価を下すコアな愛好家層からは「仕事中に噛むと頭が冴え渡る」「アニス特有の清涼感がハーブティーを濃縮したようで癖になる」「最初は地獄だと思ったが、3回食べたら箱買いする身体になっていた」といった、中毒性を示唆する声が寄せられています。まさにリコリス菓子の味の評判は、中間の「普通」が存在しない稀有な食品であることを裏付けています。
では、実際に試してみたいと考えた場合、どこへ行けば購入できるのか。主なリコリス菓子の販売店の店頭流通状況を実地調査しました。
輸入食品の代表格であるカルディのリコリス菓子としては、フィンランドの老舗メーカー「パンダ(Panda)」のナチュラルリコリスや、ハリボーの黒いリコリス(シュネッケン)が定期的にラインナップされています。カルディでは特に北欧フェアやハロウィンシーズン前後に陳列される頻度が高まる傾向にあります。
一方、若者や深夜の買い物客が集まるドンキホーテの取扱店舗においては、すべての店舗で常備されているわけではありません。MEGAドン・キホーテなどの大型店を中心とした「輸入菓子・パーティーグッズコーナー」において、ハリボー製品のバリエーションの一つとしてシュネッケンがスポット入荷されているケースが多く見受けられます。確実に手に入れたい場合は、PLAZA(プラザ)やヴィレッジヴァンガードの大型店舗、あるいはAmazonや楽天市場などのECモールを利用するのが最も確実なアプローチです。
一般に知られていない盲点とリスク|リコリスの健康効果と副作用
単なる「珍しい海外のお菓子」として気軽に消費されがちなリコリスですが、その薬理作用の強さゆえに、知っておくべき重要な身体への影響が存在します。古くから生薬として用いられてきた経緯が示す通り、リコリスの健康効果と副作用には明確な表と裏があります。
効能面としては、主成分であるグリチルリチンに優れた抗炎症作用や抗アレルギー作用、胃粘膜の保護作用が認められています。風邪の初期症状における喉の痛みの緩和や、胃酸過多による不快感を和らげる効果が期待され、ヨーロッパでは伝統的なメディカルハーブとしての地位を保っています。
しかし、現代の医学において最も警戒されているのが過剰摂取による健康被害です。グリチルリチンを短期間に大量、あるいは長期間にわたって継続摂取すると、体内のカリウムが過剰に排泄され、ナトリウムと水分が体内に滞留する「偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)」を引き起こす危険性があります。
この状態に陥ると、著しい血圧上昇、低カリウム血症、手足の脱力感や筋力低下、全身の重い浮腫(むくみ)などの症状が現れます。米国食品医薬品局(FDA)は、40歳以上の成人が1日あたり約2オンス(約56グラム)のブラックリコリスを2週間以上にわたって毎日摂取した場合、不整脈などの重大な心臓疾患を引き起こす可能性があるとして公式に警告を発しています。珍しさからまとめ買いをし、短期間で一気に食べ尽くすような行為は厳に慎むべきです。

【プロの結論】文化人類学的視点から読み解く味覚の境界線と選び方
なぜ、リコリス菓子をめぐる評価は国境を越えた瞬間にこれほど激変するのか。文化人類学や食行動心理学の視点から紐解くと、そこには人間が持つ「食の境界線(味覚のバウンダリー)」が作用していることが分かります。
人間は幼少期に「安全なエネルギー源」として認識した味覚体系を基準に、未知の食べ物をジャッジします。日本人が古くから親しんできた「かつお節のイノシン酸」や「昆布のグルタミン酸」、「醤油や味噌の発酵臭」は、幼少期の家庭環境で安全と快楽に結びついているため、無条件の美味しさとして受容されます。しかし、乾燥させた大豆を発酵させた納豆のアンモニア臭や、塩分濃度の高い塩辛は、その食文化を持たない外国人にとって「腐敗と危険」のシグナルとして知覚されます。
リコリス菓子におけるアニス香と甘草の甘みもまったく同じ構図です。北欧の家庭において「母の温もり」や「冬の団らん」と結びついているハーブの香りは、その原体験を持たない日本人にとって「防腐剤や薬品の警告サイン」として直感的に拒絶されてしまうのです。この文化的な文脈の違いを理解することが、味覚のギャップを冷静に受け止める第一歩となります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
リコリス菓子に興味を持った際、自身が挑戦すべきかどうかを判断するための客観的な基準を提示します。
▼ 挑戦してみる価値が高い人
- ルートビアやドクターペッパーなど、サロンパス系・薬品系の香気を持つ炭酸飲料を好む人
- 八角(スターアニス)を効かせた本格的な台湾・四川料理や、フェンネル、アブサン酒が好きな人
- 龍角散や生薬系ハーブの風味が心地よく、市販の甘いだけのお菓子に退屈さを感じている人
- 海外の特異な食文化や「異文化体験」そのものに強い知的好奇心と耐性を持っている人
▼ 購入を控えるか、慎重になるべき人
- フルーツ系やヨーグルト系など、ジューシーで万人受けする甘いグミを期待している人
- 漢方薬の匂いや、パクチー・ハッカなどの強い香草全般に強い生理的拒絶感がある人
- 高血圧の持病がある方、心臓疾患の既往歴がある方、妊娠中または授乳中の方(グリチルリチンの影響を避けるため)
- 「まずい」と分かっていても食べ物を捨てることに強い罪悪感を抱いてしまう人
【リコリス お 菓子】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初心者が初めて食べるなら、どの商品から入るのが安全ですか?
A1:いきなりハリボーの黒いリコリス(シュネッケン)やサルミアッキに挑むと、高確率で挫折します。初めて試すのであれば、フィンランドの「パンダ(Panda)ナチュラルリコリス」のように、アニス香が控えめで素材本来の素朴な甘みが強い製品か、近年人気を集めている「ラクリッツ(Lakrids by Bülow)」のような外側を高品質なチョコレートでコーティングしたスイーツタイプから入ることを強く推奨します。
Q2:ハリボーのタイヤ型リコリス(シュネッケン)はどうやって食べるのが正解ですか?
A2:シュネッケンは2本の細いグミが渦巻き状に合体しています。そのまま丸ごと噛み切って食べるのも自由ですが、現地では渦巻きの端をつまんで一本の長い紐状にピール(剥がし)ながら、少しずつ千切って食べるのが子供たちの定番の楽しみ方です。少しずつ口に含むことで、過度なハーブの衝撃を和らげる効果もあります。
Q3:ドラッグストアで売られている漢方の「甘草」と同じものですか?
A3:植物としての起源は同一(マメ科のカンゾウ属)です。日本の医療用・一般用漢方製剤(甘草湯や葛根湯など)に含まれる甘草エキスと、リコリス菓子の主原料は基本的に同じ成分を含んでいます。そのため、日常的に甘草を含む漢方薬を服用している方がリコリス菓子を多食すると、グリチルリチンの重複摂取となり副作用リスクが高まるため注意が必要です。
Q4:リコリス菓子はなぜ黒い色をしているのですか?
A4:甘草の根から抽出したエキス自体が暗褐色をしていることに加え、伝統的な製法において糖蜜(モラセス)やカラメルを煮詰めて使用するため自然な黒褐色になります。さらに市販の工業製品では、その伝統的な黒色を強調するために植物炭末色素などの天然着色料でより深い漆黒に仕上げられているケースが一般的です。
まとめ:偏見を捨てて味わう魅惑のブラックキャンディ
「タイヤの味」「世界一まずい」というセンセーショナルな言葉の裏には、北欧をはじめとする欧州の歴史、厳しい冬を生き抜くための生活の知恵、そして幼少期の記憶と結びついた深い食文化が息づいています。日本人の味覚スケールに当てはめれば確かに異質極まりない存在ですが、その異質さこそが異文化の食体験が持つ真の醍醐味です。
カルディや輸入菓子店で見かけた際は、単なる罰ゲームの道具として消費するのではなく、何百年もの歴史が育んだ「もう一つの味覚の世界」への招待状として、成分や体調に配慮しながら一口味わってみてはいかがでしょうか。その強烈なハーブの奥底に、ヨーロッパの人々が虜になってやまない芳醇な甘露の片鱗を感じ取ることができるはずです。 (出典: リコリス お 菓子(Yahoo!ニュース))