従三位とは?もらえる人の基準や特権・恩給の有無と正三位との違いを徹底解説
著名な政治家や文化人、功績を残した著名人が逝去した際、ニュース速報や官報で「従三位に叙された」という報道を目にする機会は少なくありません。しかし、多くの人にとって「位階(いかい)」という概念は、日常会話ではあまり馴染みがない制度です。
古代の律令制に起源を持ち、1926年(大正15年)制定の「位階令」に基づいて現在も運用されている位階制度において、従三位(じゅさんみ)は特別な意味を持つ格式です。本稿では、従三位の叙位基準やもらえる人の条件、正三位との明確な違い、気になる現代の特権や年金の有無、さらには歴史上の偉人から近現代の受章者まで、一次情報と法制度の事実関係に基づいて徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:従三位は位階令が定める序列で上から6番目に位置し、古代では「公卿(貴族)」への境界線、現代では国務大臣経験者や最高裁判事、最高峰の功績を残した文化人に贈られる極めて高い栄典です。
- 要点2:日本国憲法第14条の規定により、現代の従三位に金銭的特権や恩給・年金などの金銭給付は一切なく、純粋な名誉的栄典として死没時に遺族へ「位記」が交付されます。
- 要点3:正三位が総理大臣や衆参両院議長など「三権の長」クラスを主な基準とするのに対し、従三位は閣僚や旭日重光章・瑞宝重光章クラスに対応し、その功績の重みによって厳格に区分されています。
【従三位の正体】どのような位階なのか?歴史的意味と現代の叙位基準
日本の栄典制度において、勲章(叙勲)と並んで重要な柱となっているのが「位階(叙位)」です。位階は正一位から少初位下まで全30階(現行の位階令では正一位から従八位までの16階)が定められており、従三位は上から数えて6番目という最高峰の格式に位置します。
歴史的に見ると、従三位は律令体制において政治の中枢を担う「公卿(くぎょう・上級貴族)」になれるかどうかの決定的な境界線でした。正四位上以下の官人を「諸大夫(しょだいぶ)」と呼んだのに対し、従三位以上になって初めて天皇の御前で政務を議論する議政官(中納言、近衛大将、左右衛門督など)の相当官職に就くことが許されたのです。
内閣府賞勲局の運用基準によると、戦後の日本国憲法下における位階は生前授与が原則として停止されており、国家や社会に顕著な功績を残した人物が亡くなった際に、その生涯の功績を国家として称える「死没者叙位」として追贈されます。現在、従三位をもらえる人(叙位基準)は以下のようなキャリアを持つ人物が中心です。
- 国務大臣(閣僚)を長年務めた政治家
- 最高裁判所判事、高等裁判所長官、検事総長などの司法重鎮
- 都道府県知事や政令指定都市の市長として顕著な地方自治の功績を挙げた者
- 学術、芸術、文化、産業の発展において国家レベルの極めて顕著な功労を残した者(文化勲章受章者やノーベル賞受賞者、日本学士院会員など)
- 自衛隊の統合幕僚長や陸海空の幕僚長を経験した最高幹部

【比較で納得】正三位との決定的な違いと官職相当・勲章との対応表
位階制度を理解する上で、読者の多くが疑問を抱くのが「正三位(しょうさんみ)」と「従三位(じゅさんみ)」の具体的な境界線です。一階級の違いではあるものの、国家栄典の運用基準においては歴然とした職歴・功績の差が存在します。
原則として、正三位は「三権の長(内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官)」を務めた人物や、旧勲一等に相当する「旭日大綬章」「瑞宝大綬章」を受章した国家のトップリーダーが対象となります。これに対し、従三位は「国務大臣」「最高裁判事」「旭日重光章」「瑞宝重光章(旧勲二等相当)」の受章者が主な基準です。
| 項目 | 従三位(じゅさんみ) | 正三位(しょうさんみ) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 序列(全16階中) | 第6位 | 第5位 | いずれも国家最高幹部級だが、正三位は国家の筆頭指導者層 |
| 主な対象公職 | 国務大臣、最高裁判事、衆参副議長、検事総長、有力知事 | 内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官 | 三権の長経験者か閣僚経験者かで厳格に分かれる |
| 対応する勲章の目安 | 旭日重光章、瑞宝重光章(旧勲二等相当) | 旭日大綬章、瑞宝大綬章(旧勲一等相当)、文化勲章 | 叙位叙勲の慣例に基づき、佩用する勲章格と連動 |
| 古代の官職相当 | 中納言、近衛大将、左右衛門督 | 大納言、左右大臣(正・従二位〜従三位)、太宰帥 | 公卿制度における議政官序列の格式を反映 |
| 歴史的叙位者の代表例 | 坂本龍馬(贈従三位)、平清盛(初期叙位時)、黒澤明 | 織田信長(生前時)、歴代首相(中曽根康弘、安倍晋三など生前・没後) | 歴史の転換点を担った巨星が並ぶ最高峰の階位 |
【実態検証】特権や恩給はあるのか?金銭的メリットと世論のリアルな視線
ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「従三位をもらうと遺族に年金や特別手当が支給されるのか?」「税金から恩給が出る特権階級ではないか?」といった疑問の声が散見されます。しかし、結論から申し上げますと、現代の日本において従三位に伴う金銭的特権や年金・恩給の給付は一切存在しません。
日本国憲法第14条第3項には、次のように明確に記されています。
「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又はかつてこれを有した者の代に限り、その効力を有する。」
戦前の大日本帝国憲法下では、高位の位階を持つ貴族院議員への歳費加算や宮中席次における優先権、恩給の加算といった実質的特権が存在していました。しかし、日本国憲法の施行に伴い、これらの世襲的・財政的特権は完全に撤廃されました。
現在、閣議決定を経て天皇陛下より授与されるのは、天皇陛下の御璽(ぎょじ)が押印された美濃和紙の「位記(いき)」と呼ばれる証書のみです。遺族にとっての価値は、故人が生涯をかけて国や社会に尽くした功績を国家が最高形式で公認・顕彰したという「精神的名誉の極致」にあります。葬儀の祭壇に位記が飾られることで、参列者に故人の偉業を伝える無形の重みを持つに留まります。

【歴代一覧】従三位(贈従三位)を受けた歴史上の偉人と近現代の有名人
位階制度の歴史において、「従三位」は幕末の志士から現代のカルチャーを築いた巨星まで、数々の著名人に贈られてきました。ここで重要になるのが「贈従三位(ぞうじゅさんみ)」という表現です。
「贈」の文字が付く場合、それは生前に叙位されたのではなく、死後に功績を再評価されて位階を追贈されたことを意味します。明治政府は、明治維新の達成に命を捧げた志士たちへの顕彰事業として、多くの幕末の英雄に贈位を行いました。
歴史を動かした幕末・明治の偉人たち
幕末の風雲児として知られる坂本龍馬は、1891年(明治24年)4月8日、明治維新における大政奉還の推進や海援隊結成などの先駆的功績が評価され、「贈従三位」を授与されました。同郷の中岡慎太郎や武市半平太は「贈正四位」であったことからも、明治政府が龍馬の功績をいかに格別のものとして位置づけていたかが分かります。
映画界・芸術界・学術界の巨星たち
近現代において、芸術や学問の極致を極めた文化人にも従三位が叙されています。映画監督として世界的な評価を確立した黒澤明氏(1998年没)は、文化勲章受章者として没時に従三位に叙されました。
また、日本学士院会員やノーベル物理学賞・化学賞を受賞した研究者、医学の発展に生涯を捧げた医学博士なども、没後に従三位を授与される代表的な対象者です。
大衆文化・芸能界のレジェンドたちの叙位事情
国民的人気を博した芸能人やクリエイターの叙位・叙勲については、その功績と受章した勲章によって位階が分かれます。国民栄誉賞を受賞した漫画家の長谷川町子氏や映画俳優の渥美清氏、歌手の美空ひばり氏などは、それぞれ受章した勲章(勲四等や勲三等など)に応じて従四位や正五位などの位階が追贈されています。
従三位のハードルは極めて高く、芸能・エンターテインメント領域単独というよりも、長年にわたり国際的な文化振興や学術機関のトップとして組織的・国家的貢献を果たした人物が叙位の主流となっています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|叙位・叙勲の落とし穴
位階制度に関しては、一般に正しく認知されていない盲点がいくつか存在します。ネット上の情報を精査する上で押さえておくべき重要な視点は以下の3点です。
第一の盲点は、「生前の位階授与は現行制度で行われていない」という事実です。高齢の政治家や文化人が叙勲(旭日章や瑞宝章)を生前に受けることは日常的ですが、位階(叙位)は原則として亡くなった当日に遡って閣議決定されます。「現在〇〇氏は従三位である」という表現は、歴史上の人物を除き、存命中の現代人には当てはまりません。
第二の盲点は、「勲章」と「位階」の完全な混同です。「旭日重光章」は首から提げるメダル(佩用する記章)そのものを指すのに対し、「従三位」は個人の格式・序列を示すステータスです。現代では両者が連動して運用されており、旭日重光章を受けた元閣僚が亡くなった際、自動的に従三位の叙位審査へと進む構造になっています。
第三の盲点は、「不祥事や有罪判決による叙位の剥奪・見送り」です。どれほど顕著な公職歴があっても、任期中や引退後に刑事事件で有罪が確定した場合や、社会的な重大不祥事を起こした場合は、内閣府賞勲局の内規により叙位の対象から厳格に除外されます。位階は単なる年功序列の産物ではなく、全生涯にわたる人格的清廉性と国家への誠実さが問われるシステムです。
【プロの結論】国家栄典システムから読み解く「名誉」の社会心理学的価値
現代の日本において、実利的な年金や金銭的優遇が一切伴わない位階制度がなぜ厳格に維持されているのでしょうか。社会学および制度論の観点から見ると、従三位をはじめとする叙位制度は、「個人の全生涯に対する国家的な最終評価と社会的総括」という極めて強力な心理的・社会的機能を果たしています。
利己的な蓄財や権力行使ではなく、公の福祉や国家・社会の発展にどれだけ人生を捧げたかという無形の価値を、大宝律令から続く千数百年の歴史的文脈に接続して顕彰する装置です。現代を生きる私たちがこの制度を理解する際、金銭的損得勘定のレンズではなく、「日本社会がどのような功績と生き方に最高の敬意を払ってきたのか」という歴史的価値基準として捉えることが最も本質的です。

【従三位とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:従三位をもらうと遺族に年金やお金は支給されますか?
A1:一切支給されません。日本国憲法第14条の規定により栄典にいかなる特権も伴わないため、現代の叙位は純粋な名誉顕彰であり、金銭や手当、恩給の加算などは法的に完全に排除されています。
Q2:正三位と従三位ではどちらが偉いですか?
A2:正三位(しょうさんみ)の方が上位です。位階令において正三位は第5位、従三位は第6位に位置します。公職基準では、正三位が首相や衆参両院議長など三権の長クラス、従三位が国務大臣や最高裁判事クラスに対応しています。
Q3:坂本龍馬が「正四位」ではなく「従三位」と言われるのはなぜですか?
A3:1891年(明治24年)の明治政府による特旨贈位において、坂本龍馬には「贈従三位」が授与されたためです。同郷の武市半平太や中岡慎太郎には「贈正四位」が贈られており、龍馬は大政奉還の功労者として一段高い評価を受けました。
Q4:民間の一般人でも従三位に叙される可能性はありますか?
A4:極めて稀ですが、学術・芸術・産業分野で世界的・国家的な偉業を達成した人物であれば可能性があります。ノーベル賞受賞者や文化勲章受章者、日本学士院会員など、民間出身であっても人類や国家社会に多大な貢献を残した人物には従三位が追贈される道が開かれています。
まとめ:従三位が示す功績の重みと正しい知識
従三位は、古代の公卿制度に端を発し、現代においても国務大臣経験者や最高裁幹部、世界的功労者に贈られる国家最高峰の栄典です。特権や金銭的利益が存在しないからこそ、そこには故人が生涯を捧げて築き上げた功績に対する、純粋で揺るぎない社会的敬意が宿っています。
訃報や官報で「従三位」の文字を目にした際は、その人物が日本の社会基盤、文化、あるいは歴史の発展においてどれほど重い足跡を残したのか、その生涯の歩みに思いを馳せる一つの指標として受け止めるのが適切です。 (出典: 従 三 位 と は(Yahoo!ニュース))