「この木なんの木」の現在と正体|ハワイ巨木の維持費と最新観光事情
テレビから流れる「この木なんの木 気になる木〜」という親しみやすい歌声を耳にしたことがない日本人は、ほとんどいないでしょう。株式会社日立製作所の企業CMソングとして1973年の放送開始以来、半世紀以上にわたって親しまれている「日立の樹」。画面いっぱいに広がる青空と、大地にどっしりと根を張る雄大な巨木のビジュアルは、日本のお茶の間に深く刻み込まれています。
しかし、あの木がCGや架空の存在ではなく、ハワイに実在する本物の巨木であることや、植物としての正式な種類、そして現地をめぐる莫大な維持費の裏側まで詳しく知る人は多くありません。一時期ネット上で囁かれた「閉園危機」の真相や、2026年現在のモアナルア・ガーデンの最新観光事情、昭和の天才たちが手掛けた名曲誕生の舞台裏まで、徹底した取材データと公式記録をもとに解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「日立の樹」の正体はハワイ・オアフ島の「モアナルア・ガーデン」に実在する樹齢約140年の「モンキーポッド」。
- 要点2:日立と庭園側との間には過去年間約40万ドル規模の独占撮影契約が結ばれた経緯があり、莫大な維持費と入園料によって保護が続けられている。
- 要点3:一時休園による「閉園デマ」を乗り越え、2026年現在も一般公開中。ただし入場ルールや現地事情は時代とともに大きく変化している。
【正体を暴く】「日立の樹」のモデルと種類|ハワイ・オアフ島に実在する巨木の生態
CMに登場する「この木なんの木」の植物学的な種類は、マメ科ネムノキ亜科に属する熱帯性の落葉高木「モンキーポッド(学名:Samanea saman / Albizia saman)」です。和名では「アメリカネムノキ」とも呼ばれ、ハワイをはじめとする太平洋諸島や熱帯アメリカに広く自生しています。
現在CMのシンボルとして親しまれている個体がある場所は、ハワイ・オアフ島ホノルル郊外の歴史ある私有公園「モアナルア・ガーデン(Moanalua Gardens)」です。ホノルル国際空港(ダニエル・K・イノウエ国際空港)から車で北東へ約15分ほどの距離に位置しており、ワイキキ中心部からもアクセスしやすい立地にあります。
このモンキーポッドの圧倒的なスケール感は、数字を見るとより際立ちます。公式記録や樹木調査データによると、その規模は以下の通りです。
- 樹齢:推定約130年〜140年
- 樹高(高さ):約25メートル(ビル7〜8階相当)
- 枝の広がり(幅):約40メートル
- 幹の周囲:約7.1メートル
モンキーポッドには「レインツリー(雨降り木)」という別名があります。これは、雨が降りそうになると葉を閉じ、雨が上がると再び葉を開くという特徴や、夜間に葉を閉じて翌朝の露を地面に落とす生態に由来します。現地を訪れて真下から見上げると、幾重にも重なり合う巨大な枝葉がまるで天然の巨大な傘のように広がり、差し込む木漏れ日が息をのむような美しい陰影を描き出しています。

知られざる維持費と巨額マネーの真相|年間数千万円が動く「独占契約」の舞台裏
モアナルア・ガーデンに立つこの巨木は、ハワイ州の管轄する公立公園ではなく、カメハメハ王家ゆかりの歴史的土地を継承した私有地(デーモン財団および民間トラスト)が所有する土地に根を張っています。そのため、公園の維持管理や警備、樹木の保全にはすべて民間資本が必要となります。
日立製作所がこの木を企業シンボルとしてCM撮影に使い続ける背景には、巨額の契約金と樹木保全への継続的な支援が存在します。現地メディアや経済報道の取材データによると、かつて日立側が支払っていた庭園の撮影権・商標利用に伴う契約金は、1990年代までは年間約2万ドル(当時の為替で数百万円程度)でした。
しかし、2006年の契約更新交渉において、庭園の維持管理費の高騰や観光客の急増に伴う警備コストを反映し、年間約40万ドル(当時のレートで約4,000万〜5,000万円超、円安の現在換算では6,000万円規模)という破格の契約へと見直されたことが報じられました。単一の樹木に対するプロモーション費用としては世界屈指の規模です。
この巨額の資金は、ただ権利料として消費されているわけではありません。巨大なモンキーポッドの枝打ち、定期的な病害虫の防除、根元の土壌改良、そして日本人をはじめとする多くの観光客を安全に迎え入れるための園内インフラ整備に充当されてきました。「美しい大樹を世界に発信し続ける責任」として、日立が投じてきた維持保全のコストは、単なる広告枠の購入を超えた企業の社会的責任(CSR)と文化財保護の融合とも評されています。
【データ比較】「日立の樹」歴代CMの変遷と撮影地・スペックの全貌
「この木なんの木」のCMは半世紀以上にわたり放映されていますが、実は「ずっと同じハワイの木が使われていたわけではない」という事実をご存じでしょうか。世代ごとに異なる樹木やロケ地が選定されてきた歴史があり、時代背景とともにその表現手法も進化を遂げてきました。
| 世代・放送時期 | 撮影地・使用された樹木 | 主な特徴・映像演出 | 編集部の分析・CM史における意義 |
|---|---|---|---|
| 初代(1973年〜) | アニメーション(イラスト) | 手描きの温かみあるアニメーションで大樹を表現 | 放送開始当初は実写ではなく、概念的な「グループの総合力」を示す象徴として描かれた。 |
| 2代目(1975年〜) | ハワイ・オアフ島 (モアナルア・ガーデン) | 初の実写化。現在の木とは異なる別のモンキーポッド | 実在する巨木の力強さを初めて導入。日本人のハワイ観光ブームと重なり爆発的な認知を獲得。 |
| 4代目(1980年代前半) | シンガポール (マンゴーの木) | アジアの活気を取り入れ、ハワイ以外の巨木を撮影 | 日立のグローバル展開を反映。しかし視聴者から「あのハワイの木に戻して」との声が相次ぐ。 |
| 9代目〜現在(2005年〜2026年) | ハワイ・オアフ島 (モアナルア・ガーデン) | 高精細4K/8K撮影、現在の象徴的なモンキーポッドを定点撮影 | デジタル時代のサステナビリティ・環境意識のシンボルへ昇華。世代を超えたブランド資産として確立。 |
このように、過去にはシンガポールロケが行われたり、同じモアナルア・ガーデン内でも別の木が撮影されたりといった歴史があります。視聴者が抱く強いノスタルジーと愛着に応える形で、最終的に「オアフ島モアナルア・ガーデンの名木」が恒久的な象徴として選ばれ続けているのです。

【実態検証】モアナルア・ガーデンの現在と閉園危機の真相|2026年最新の入場料と観光事情
インターネット上の検索候補で頻繁に目にするのが「モアナルアガーデン 閉園」という不穏な噂です。「もう現地は見学できないのではないか?」と不安に思う旅行者も少なくありません。
結論から申し上げると、モアナルア・ガーデンは2026年現在も開園しており、観光が可能です。では、なぜ「閉園した」という情報が拡散してしまったのでしょうか。
その背景には、2020年から2022年にかけての世界的なパンデミックに伴う長期臨時休園と、それに伴う観光受け入れ体制の抜本的見直しがあります。かつてモアナルア・ガーデンは入場無料のオープンな公園として開放されており、ワイキキ発の大型観光バスが連日押し寄せていました。しかし、過剰なオーバーツーリズムによる芝生の荒廃や根の損傷、さらには維持管理費用の不足が限界に達したのです。
この危機を打開するため、公園管理財団は営業再開にあわせて大規模な制度改定を実施しました。それが「入場料の有料化」と「事前ルール・開園日時の厳格化」です。
- 入場料の推移:かつては無料 ➜ 3ドル ➜ 現在は一般大人10ドル(ハワイ居住者や子どもは割引あり)
- 開園日時:週7日の無休営業から、開園曜日や営業時間が制限される運用へシフト(訪問前の公式スケジュール確認が必須)
- 保護柵の設置:樹木の健康を守るため、幹の根本周辺への立ち入りを制限するエリアが整備
現地を訪れた日本人旅行者からは、「以前のように芝生の上に寝転がって幹に触れることはできなくなったが、混雑が劇的に減り、静寂の中で本来の神聖な空気感を味わえるようになった」という好意的な声が多く寄せられています。有料化によって得られた資金がダイレクトに木々のメンテナンスに還元されており、園内の手入れは極めて良好に保たれています。
昭和・平成の黄金タッグ|小林亜星と伊藤アキラが名曲の歌詞に込めた「仕掛け」
「この木なんの木」が半世紀以上にわたって色褪せない最大の理由は、映像の美しさだけでなく、耳に残る名曲「日立CMソング(正式曲名:『日立の樹』)」の音楽的完成度にあります。
作詞を手掛けたのはヒットメーカーの伊藤アキラ氏、作曲・編曲を手掛けたのは昭和の巨匠・小林亜星氏です。この二人が生み出した歌詞とメロディには、広告心理学の観点からも極めて緻密な仕掛けが施されていました。
歌詞を改めて追ってみると、冒頭から中盤にかけては企業名が一切登場しません。
「この木なんの木 気になる木 名前も知らない木ですから 名前も知らない木になるでしょう」
当時の制作関係者の回想録やインタビューによると、日立側からの当初の要望は「総合電機メーカーとして、多岐にわたるグループ事業のシナジーを表現してほしい」という抽象的なものでした。伊藤アキラ氏は、個々の製品名を連呼する野暮な手法を排し、あえて「名前も知らない木」という好奇心のフック(謎解き)を提示。幹から大きく伸びる無数の枝や葉を、家電・重電・情報通信など多面的な事業に例える比喩を完成させました。
そこに小林亜星氏による、シンプルでありながら一度聴いたら脳内をループする洗練されたトニカ主和音のコード進行が重なります。そして楽曲のラスト、もっとも気分が高揚した瞬間に初めて「見たこともない花が咲くでしょう」から「日立」のサウンドロゴへと着地します。疑問を抱かせ、イメージを膨らませ、最後に信頼の企業名で包み込むという広告手法は、日本のコマーシャルソングの金字塔として今なお広告業界の教科書に挙げられています。
歴代の歌唱には、朝コータロー氏、ヒデ夕樹氏、シンガーズ・スリー、そしてアカペラグループのINSPi(インスピ)などが起用され、時代の息吹を取り入れながらアレンジが受け継がれてきました。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|実は「あの木」は1本だけではなかった?
観光情報やSNSでしばしば見られる誤解を、客観的な事実に基づいて正していきます。
誤解1:モアナルア・ガーデンに行けば「あの木」はすぐに1本だけ見つかる?
現地に足を運んだ観光客が最初に驚くのが、「同じような巨大なモンキーポッドが園内に何本も立ち並んでいる」という点です。モアナルア・ガーデンは広大な歴史公園であり、敷地内には複数の立派なモンキーポッドが点在しています。どれが日立のCMで使われている木なのか迷う人が後を絶ちませんが、園内には「日立の樹」であることを示す公式の案内サインが設置されています。間違えて別の木の写真を撮って満足して帰ってしまう旅行者も少なくありません。
誤解2:モンキーポッドはハワイ固有の神聖な樹木である?
ハワイの風景に完全に溶け込んでいるため「ハワイ固有種」と思われがちですが、植物学的には中南米(メキシコからブラジル付近)原産の外来種です。19世紀半ばにハワイ王国へ持ち込まれ、温暖な気候と豊かな土壌に適応して急速に根付きました。ただし、モアナルア・ガーデンそのものはカメハメハ5世が別荘を構えたハワイ王室ゆかりの神聖な歴史地区であり、文化的価値が極めて高い土地であることは紛れもない事実です。
【プロの結論】モアナルア・ガーデン訪問に向いている人・慎重になるべき人の判断基準
旅行ジャーナリズムおよび現地動向の分析から、2026年現在のハワイ渡航においてモアナルア・ガーデンを旅程に組み込むべきか否かの「明確な判断基準」を提示します。
モアナルア・ガーデン訪問を強くおすすめできる人
- 日本のカルチャー・昭和平成CMの「聖地巡礼」を肌で体感したい人:画面越しに見ていたあの圧倒的な広がりと実物のスケール感は、写真や動画では決して味わえない感動があります。
- 自然の静寂と雄大なランドスケープに癒やされたい人:有料化されたことで団体ツアー客の喧騒が落ち着き、緑豊かな芝生と木漏れ日のもとでゆったりとした時間を過ごすことができます。
- レンタカーや配車アプリ(Uber/Lyft)を使いこなせる人:ホノルル空港から近いため、ハワイ到着直後や帰国直前のドライブスポットとして非常に組み込みやすい立地です。
訪問を慎重に検討・あるいは見送るべき人
- ワイキキ周辺のビーチやショッピングだけで短時間滞在を完結させたい人:ザ・バス(TheBus)などの公共交通機関を利用する場合、バス停からの徒歩移動や乗り換えに時間を要します。滞在時間が限られている短期旅行者には移動のタイムロスが大きくなるリスクがあります。
- アクティビティやアトラクション、充実した商業施設を期待している人:モアナルア・ガーデンはあくまで歴史的建造物(カメハメハ5世のカテージ等)と樹木が主体の静穏な植物園です。カフェや大型ギフトショップで賑わう観光テーマパークを想像していると、肩透かしを食う可能性があります。
【この 木 なん の 木】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「この木なんの木」の花はどんな形・色をしていますか?
A1:モンキーポッドは、白から鮮やかなピンク色(淡い紅色のグラデーション)をした、羽毛のような繊細な細い花(雄しべが放射状に広がった形)を咲かせます。ハワイでは主に5月〜11月頃にかけて開花時期を迎え、緑一面の巨大な樹冠に可憐なピンク色の花が散りばめられる姿は非常に華やかです。
Q2:ワイキキ中心部からモアナルア・ガーデンへはどうやって行けばいいですか?
A2:最もスムーズなのはUberやLyftなどの配車アプリ、またはレンタカーの利用で、所要時間は約20〜30分です。オアフ島の公共バス「TheBus」を利用する場合は、ワイキキからアラモアナセンター等を経由してルートに乗る形になりますが、最寄りのバス停から高速道路脇の道を10〜15分ほど歩く必要があるため、手軽さと安全性を考慮すると配車サービスやオプショナルツアーの利用が推奨されます。
Q3:なぜ日立はハワイの木をCMに採用し続けているのですか?
A3:大地に広く根を張り、大きな枝葉で人々に木陰(憩いの場)を提供し、やがて豊かな花を咲かせるモンキーポッドの姿が、社会インフラや先端技術を通じて人々の生活を支える「日立グループの企業理念」と完璧に合致しているためです。半世紀にわたり同じ世界観を守り続けることで、日本屈指の信頼性とブランドアイデンティティを確立しています。
Q4:現在の入場料の支払い方法は何が使えますか?
A4:現地の入園ゲートでは、主要なクレジットカードやタッチ決済が広く利用可能です。ただし、現地の運営体制や開園スケジュールは予告なく変更される場合があるため、渡航前には必ず公式ウェブサイトまたは現地の最新観光情報を確認してください。
まとめ:半世紀を超えて愛される「巨木のレガシー」と未来への継承
「この木なんの木」として親しまれるモアナルア・ガーデンのモンキーポッドは、単なる一企業のテレビCMのロケ地という枠を超え、日本人の心に原風景として根付いた特別な存在です。
昭和から平成、そして令和の現在に至るまで、メディア環境や人々のライフスタイルは激変しました。しかし、ハワイの青空の下で力強く両手を広げる大樹の姿は、変わらぬ雄大さで訪れる者を包み込んでいます。ネット上の誤った情報や一時的な休園騒動に惑わされることなく、現地で大切に保護されているその歴史と背景を理解した上で、ぜひオアフ島の地に立つ「奇跡の巨木」の生命力を体感してみてください。 (出典: この 木 なん の 木(Yahoo!ニュース))